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7-6 姫宮と会長の電話会談 2

last update Huling Na-update: 2025-05-27 07:28:24

 かなり落ち込んでいる様子の朱莉を見て、翔は思った。

(やはり朱莉さんに姫宮さんと京極が双子の兄妹だと伝えなくて正解だったようだな)

「それで姫宮さんの後任の秘書の方は決まったのですか?」

「う~ん……それがまだ決まっていないようなんだよ。姫宮さんの話では候補は上がっているらしいが、今調整中だとかで……」

「翔さんが選ばなくて良かったのですか?」

朱莉の問いに翔は答えた。

「ああ。今回はとりあえず、正式な秘書が決まるまでの繋ぎの秘書だから別に俺は構わないさ。でもどうせなら琢磨や姫宮さんのように優秀な秘書であることを願いたいね」

「そうですね。では行ってきます」

朱莉が靴を履いて玄関へ向かうと、翔が声をかけた。

「待ってくれ、朱莉さん。エントランス迄送るよ」

「え? どうしたのですか? 突然急に……。そこまでお見送りしていただかなくても大丈夫ですよ?」

朱莉は驚いて翔を見上げた。

「いや、俺がエントランスまで送りたいからさ。蓮だってきっとそうしたいさ。な、蓮?」

翔は蓮を朱莉の方へ向けるように抱くと、蓮が朱莉に手を伸ばしてきた。

「マーマー」

「お? 蓮……今ママって言ったのか?」

翔は驚いた様子で蓮を見た。すると再び蓮は朱莉を見て「マーマー」と言った。

「レ、レンちゃん……」

朱莉は翔の前で蓮が朱莉の事を呼んだので、顔が真っ赤になって俯いてしまった。

(どうしよう……翔先輩にレンちゃんからママって呼ばれているの知られてしまった。ママって呼ばせている図々しい人間だと思われてしまったかな……)

そこで朱莉は弁明しようと、顔あげて翔を見る。

「あ、あのですね。翔さん今のは……」

しかし翔は嬉しそうな顔で朱莉を見つめている。それが不思議でならなかった。

少しの間、2人は無言で見つめ合っていたが……。

「さ、朱莉さん。それじゃエントランス迄送るよ」

「わ、分かりました」

折角見送る言ってくれているのだ。あまり無下にするのも悪いと思い、朱莉は翔と一緒にエレベーターに乗り込むと、翔は1Fのボタンを押した。

ドアが閉まった所で翔は朱莉に声をかけた。

「朱莉さん。帰りのことなんだけど、車で病院を出る時俺のスマホに電話を掛けてくれるかな? そうしたらエントランスまで迎えに行くから」

「は、はい分かりました。ですが……何故ですか?」

朱莉は返事をしたものの、不思議に思って質問した。

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